梅玉会パーティー (3)

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続いての企画は、バレエダンサーの今村博明さん、川口ゆり子さん、そして日本舞踊家の 藤間蘭黄さんとのトークショーです。
web上で、その模様を再現してみましょう。

西行対談

梅玉 いまさらご紹介するまでもなく、今村博明先生、川口ゆり子先生でございます。そして、藤間蘭黄先生。
いやー、緊張しました。 皆さんご存知だと思うんですけれども、お二人、両先生、家内のホントに子供の頃からのお友達で、もう何 年になりますか、5,6年前ですか? 清里で、夏の野外のステージでバレエをなさるんですね。毎年夏になさ っているんですけれど、その舞台をはじめて拝見…、まだ本番じゃなかったんです。舞台を組み立てている ときに伺って、ぜひこの舞台で自分も踊らせていただきたいと。それで、その主催者の清里のお友達にお話 しましたら、「じゃぁ、いっそのことお二人と共演なさったら」っていうようなお話をいただいて、それか ら準備に1年かかりましたですね。題材を何しようかってところが、やっぱり1番問題で、何しろ、日本舞踊 とバレエですから、それがうまく融合できる作品をと思って、いろいろ悩みまして「時雨西行」という作品 に行き当たりました。あれは皆さんお聞きのとおり西行法師とそれから実際は普賢菩薩である、江口の君の 話で、全く世界の違う二人が絡み合うという…。やはりそういうものでないとなかなか難しいですよね、先 生。どうですか? まず、やっぱり普通の恋人同士っていうのは、なかなか難しいと思うんですよね。
今村 そうですね。それに今回は日本舞踊とバレエを一緒にという企画でしたので、そのなかでどういうポジショ ンで私たちバレエが「時雨西行」に参加できるかなっていうのが、やっぱり一番心配でした。
梅玉 そうですね。それで、テーマを「時雨西行」ということにいたしましたんですけれど、もちろん長唄の原曲 でやったのでは、バレエの皆さん、とても踊りにくいだろうし、じゃぁどうしたらいいだろうってことで、 今度は選曲をいろいろ考えました。そうしたらば、宗次郎さんのオカリナの「大黄河」ですね、あの中の曲 がとても…、ともかく清里というところは、いらした方はご存知でしょうけども、森の中で、もうホンッと うに自然の中で舞台が組まれているわけですね。ですから、そういうところにぴったり合うのは、やはりそ ういう音楽じゃないかと思って、「大黄河」の楽曲の中から、何曲かを編集いたしまして、お二人の先生に お聞きいただきました。これならばできるんじゃないかとご承諾をいただいて、さてそれからが、お互いの 振り、どのパートをそれぞれが受け持つかということで、それもご相談の上で決めたんですけども、その点 もすごくご苦労があったと思いますけど、ゆり子先生、ああいう、いわばポピュラーの音楽で踊られること もあるわけですか?
川口 あまりございません。正式のバレエは…。
梅玉 そうでしょうねぇ。ですから…。
川口 でも、とても楽しく…。
梅玉 そうでしたですよね。結果的にはとても楽しい企画になったと思いますけれども、でもさぞかし、お踊りに なるのも、振付をなさるのも大変だったと思います。私のパートは日本舞踊でございますので、蘭黄先生に お願いいたしました。 実は蘭黄先生との…、一番最初にお願いしたのは、これはもう7,8年前になるかと思いますけれども、現代音 楽で舞ったんですね。現代音楽っていいましても、つまり電子音楽で、鳥のさえずりのような、声・音しか 入ってないんですよね! あれ、20分ぐらいありましたっけ?
蘭黄 えぇ、20分ぐらいございましたね。
梅玉 ありましたよね! その間、メロディもなければリズムもない。つまり、もう、なにか、異次元から聞こえてくるような音の組 み合わせで20分間の曲が作られていたんですね。それを蘭黄先生に振付けていただいたのが一番最初だった んですけれども、あの振付も大変だったと思いますけども、ねぇ?!
蘭黄 はい。振りをお見せするということになりまして、もう、前の晩まで実は、悩んでおりまして…。それで、 振りをお見せする段になって、まぁ、あの、丁度、たまたま、そのドイツのほうのコンピュータミュージッ クの曲でしたんですけど…、
梅玉 そうでしたねぇ。
蘭黄 それについての解説のお言葉の中に、「輪廻転生」みたいなことが一言、ございましたんで、何かそういっ たようなものをテーマにできるかなぁということで、「虫が這っているところを鳥が捕まえて、それで飛び 立っていって、で、大きな鳥に捕らえられて、その大きな鳥はやがて年をとって死んでいく」みたいな…、
梅玉 そうそう!
蘭黄 非常に大まかな筋だてを踊りに表現さしていただいたんですけれど、非常にやはり、苦労いたしました。
梅玉 覚えるほうも、やはり、間が取れませんし…。たとえば、このメロディになったらこの振り、というのが、 1番覚えるコツですけれども、それができなくて、それこそ秒数で計って、このくらいになったら、音楽、 音楽っていうか「音」が変わりますから、そしたらこういう振りをなさってくださいということで、覚えて いたしました。 それが蘭黄先生との最初の出会いで、その次に、いまお話した清里のフィールドバレエだったんですけれど も、毎日、八王子の両先生のお稽古場にわれわれ二人が通いまして、何度も何度もリハーサルをいたしました。 もちろん、両先生はね、もう、本当に一流の方ですから、私もある程度胸を借りるつもりで、ぶつかりまし たけれども、助演者の皆さんがいらっしゃるわけです。森の妖精だとか、それから江口の君についてる侍女 だとかの若いお嬢さんたち。それから私の西行が武士だった時代のことを思い出して、立ち回りのシーンが あるんですけれども、それも、4人… 5人でしたっけ、4人のね、男性の舞踊家が、あちらはバレエの振りで、 こちらは日本舞踊の振りで、立ち廻りをするという、そういうところも作っていただいて。でも、その若い みなさんがですね、とっても一生懸命に、熱心に、振りを覚えてくださって…。何しろ、われわれ日本舞踊 の踊りって、あー、蘭黄先生がいる前でこんなこと言っちゃいけないけれども、ある程度大まかななんです よね。きっちり、きっちり 1・2・3・4 で覚えるわけじゃないんですよね。
蘭黄 はい。
梅玉 ですからその日によって、ぜんぜん、私がやることが、間が違うんですけれども、お嬢さんたちが一生懸命、 一生懸命それに合わせてくださって。両先生からだいぶ怒られてましたけれども…。でも、とても気持ちの いい、ジョイントが、できたと思います。
そのときの作品が、お陰様でとてもご評判をいただいて、その次の年でしたか、両先生のロシア公演のとき にこれを持って行かれたんですよね。そのときのお話は…。実はそれも私にお声がかかったんですけども、 どうしても歌舞伎座のほうが先に決まっておりましたんで、「時雨西行」の役は蘭黄先生に演っていただい たんです。どうでしたか、反響は?
今村 はい、初めての海外公演、それもロシアでの公演ということで、できるだけ日本的なものをお見せしたいと いう考えがございました。それで先ず第一に浮かんだのが、「時雨西行」で、ぜひこのバレエをロシアの方に 見ていただいて、どういう反応をいただくかなというとても不安な気持ちもございましたけれども、大変喜 んでいただきました。
日本の踊りと西洋のバレエが合体して「こんな素晴らしいもの見たことない」という、そんなお声も聴きま して、私たちはとても安心することができました。
梅玉 私が1番危惧したのは、あちらはバレエに関しては本場いらっしゃるから、いわばバレエのテクニックだと かそういうものはよーくご覧になる方が沢山にらっしゃると思うけれども、それに日本舞踊が一緒に舞台に 立ったときに、日本舞踊のほうの特色が出るかということを一番心配いたしました。そういうことは…?
今村 もちろんそういうこともございますけれども、私が梅玉さんや蘭黄先生とご一緒に舞台を踏ませていただい たときに感じたのは、本当に西洋の踊りでも日本の踊りでも、踊りの心は1つだなという気がいたしました。 ですから梅玉さんが踊ってらっしゃるとき、また蘭黄先生が踊ってらっしゃるときに、それを傍で拝見した ときに、その息遣いが、まさにバレエの踊る心と全く同じなんです。ですからそれをバレエの国ロシアでも 必ずお客様に伝わるかなと思っておりました。確かに、先生、いい評判でしたよね!
梅玉 本当に一緒に行きたかったなぁと思ったんですけどね。
蘭黄先生もとてもご立派だったそうで、あとからその評判を伺いました。
えーと「時雨西行」の中でまた思い出しましたけれども、江口の君がお点前をなさるところがありましたよね。 あれ、先生の振付ですか? 日本舞踊のほうではあるんです、えぇ、そういうところがね。
川口 一応橘バレエ学校では、お茶・お花・小笠原と、小さな頃から習い事というか、バレエのほかに習わせてい ただいていたんの、それをちょっとやってみたんですけれど、如何でしたか?
梅玉 いや、もう素晴らしい。やっぱり、優雅さというか、気品さというか! でも、まさかね、バレエの方が舞台 でお点前をなさるってことは、まず考えられないわけじゃないですか。それを取り入れてくださたっていう ところも素晴らしかったと思います。
ともかく、ゆり子先生の江口の君 実は普賢菩薩さまは、本当に高貴で素晴らしくて、自然と頭が下がる、 西行法師として頭が下がる、素敵な江口の君でした。そのとき博明先生は、えーっと、あれはなんですか、 あの「心」ですよね、心。影の部分を表現なさったんですけれども、それもとても素敵で、実際は客席のほ うから拝見したかったなと思うくらいのいい舞台でした。それでそのとき評判をいただいて、それからまた ぜひ再演をと毎年、お話があるんです。けれども、私の舞台のスケジュールがあって、なかなか伺えないの ですけども、どうやらさ来年の夏、来年の夏はちょっと弟の襲名の巡業がございますので、さ来年の夏に、 もしかしたら実現するかもしれないんです。
ぜひ皆さん、夏のフィールドバレエ、清里へお出かけください。今度何をしたらいいかって、このあいだも ね、蘭黄先生とご相談したんですけれども、やっぱり先ほど申し上げたように、なかなか普通の恋人同士と か、そういう作品はちょっと難しいと思うんですよね。それで「羽衣」はどうかと思ったんですけれども、 実は両先生の作品で「天上の詩」という、もう賞も何度もお取りになっている…、あれは「羽衣」がもとなん ですって? そうなんですってねぇ! 私はまだ機会がなくて一度も拝見したことがないんですけれども。です から先にとられちゃってるんで、使えないなと思って…。それで「幻椀久」という作品がございます。それ なんかも片方は幻ですし、片方は生身の人間ですから、そういうものも面白いんじゃないかなと、そういっ たようなことも考えております。先生のほうにも何かお考えがあったら、お聞かせください。
蘭黄 本当に私は「時雨西行」で大変いい思いをさせていただきましたんで、ぜひ第二弾をと、とっても期待してお ります。梅玉さんいろいろ、また私のほうにもアイデアをいただければと思いますので、よろしくお願いい たします。
梅玉 そういうことで、このお三方とは、もうこれから先、ずぅーーっとお付き合いが続いていくと思います。 芸の上でも、それからプライベートでも。どうぞ私同様にご贔屓賜りまするように、お願いいたします。 今度は両先生のバレエのお舞台か、蘭黄先生の日本舞踊のリサイタルで、またみなさんとお会いできればと 思っております。どうも、ありがとうございました。


さながら、「時雨西行」誕生秘話のようなかたちになり、大変興味深いお話がお三方からお聞きできたと思います。 梅玉もうらやましがっていたロシア公演の模様は、今村先生・川口先生が主催されているシャンブルウエストの ホームページや、蘭黄先生のホームページに詳しく載っていますので、そちらとあわせてご覧になると、 楽しさも倍増するのではないでしょうか?

chambreouest 今村・川口両先生の素敵な"お部屋"です

  蘭の花   蘭黄先生の温かいお人柄を髣髴とさせるblogです

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