特別寄稿 〜 「斑雪白骨城」こぼればなし (1)

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「斑雪白骨城」の作者、岩豪友樹子さんから原稿をお寄せいただきました。
これを読めば、「斑雪」が数倍面白くなること間違いなし!です。



「斑雪白骨城」誕生物語


この作品を書いたのは平成七年度の国立劇場新作歌舞伎募集に応募するためでした。
地元大分に歌舞伎の題材となるものはないかと探していたところ、中津の合元寺が目に留まりました。

「赤壁寺」の異名をもつこの寺は、中津城主となった黒田孝高(如水)が地元豪族 宇都宮鎮房を城内 にて謀殺した際、合元寺で討ち死にした宇都宮の家臣たちの血が壁に飛び散り、幾度塗り直しても血痕 がにじみ出るのでついに赤く塗り変えてしまった、という哀史を伝えています。

黒田は和睦の条件に、宇都宮鎮房の娘 鶴姫を長政の嫁に迎えるという計略をもって鎮房を中津城におび き寄せたのですが、それなら鎮房が殺されたあと 鶴姫はいったいどうなってしまったのかと調べてみ ると、なんと「広津川原で磔にされた」とのこと。
乱世にはよくある悲劇なのでしょうが、強い衝撃を受けました。私はどうしてもこの鶴姫の存在を多くの 人に知ってもらいたいと、いても立ってもいられなくなりました。
もしこれを歌舞伎として書き、そして運よく上演されて人々の心にほんの少しでも残ることができたら、 鶴姫も救われるのではないか、と…。

不思議なことに、調べれば調べるほど歌舞伎としてうってつけの題材が、取捨選択に困るほど現われてき ました。
そのため応募脚本は多岐にわたる人物が登場して、史実に忠実すぎてしまいましたが、今回上演していた だくにあたって、中村梅玉丈から「如水と鶴姫のドラマに集約して」とご指導いただき、二人の凄絶な 恋物語にのみ、焦点をあてたものに書き直しました。
如水としても やむを得ず取った手段であり、手を汚すしかなかった処置だったのですが、そこは天下の 軍師。その大きさ、奥深さ、誰もが感服させられてしまう強靭さは、現実をしっかと見据える強さの表れ でもあります。

その如水がある時、こ生意気な小娘にハッとさせられ生涯忘れ得ぬものとなってしまう、そんな物語に なれば…、と思いました。これは脚本作りの面でも本当に勉強になりました。
七年前に書いたものですので、今となってはよもや上演されるなど、思いもよらないことでした。

余談ですが、お話をいただく直前に、宇佐に行くつもりが中津まで乗り越してしまったことがありました。
中津駅で下りの列車を待っていたとき、フッと中津城や合元寺に取材に行ったときのことが懐かしく思い 出され、「上演されることも…、あるかなぁ」などと想ったものでした。
ですからそれが現実になったときは 「おお!」という感じでした。「夢はかなう」と信じ続けていた方がい いのかもしれません。
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