ぼんず さま
「花桐いろは」で、初演時にいろはの娘役を演じていらっしゃったのは、初代中村鴈治郎のお嬢様で、中村芳子さんとおっしゃる方です。
平成10(1998)年11月 大阪松竹座 三代目中村梅玉五十年祭追善狂言でこのお役を女優さんがなさったのは、座組の関係と、初演時に倣って女優さんにお願いしたら、という松竹側からのご提案もあって、新派の川崎さんにご出演いただくことになったようです。
役者のお嬢様がお父様の演目に出られることは時々、あります。 波乃久里子さんや松たか子さんも、「文七元結」のお久役で出演なさっています。
歌舞伎は、ご存知のように元々は女性のみで演じられたものでした。それが、風紀上好ましくないという幕府の判断で、若衆歌舞伎から野郎歌舞伎へと変遷し、現在に至っております。 また歌舞伎の語源は「傾く」。世の中の常識に捉われず、型破りなことをするのも、歌舞伎の要素の一つです。 ですから、歌舞伎のルーツに戻って、あるいは歌舞伎の常識を破って、女優さんが舞台に上がる<まさか>があっても、たまには良いかもしれませんね。
新派にも花柳章太郎さんや英太郎さん、一般の演劇にも篠井英介さんなど、女方さんが活躍していらっしゃいます。最近では森三中の大島美幸さんが、映画(「福福荘の福ちゃん」)でオジさん役に挑んでいます。 いろいろなお芝居で、時に少々型破りなことが起きても、鷹揚な気持ちでご見物いただければ、と存じます。 |