ひとりごと 〜 05/11

紅葉の便りが聞こえてまいりましたがいつもより遅いとのこと、顔見世に行ったころ、京の紅葉が見られるかなと考えています。だいぶ前になりますが、雪の中、大徳寺の夜間照明の紅葉を見に行ったことを思い出しました……が、まだ11月舞台がございます。

その舞台でございますが、昼の部は松島屋さんの熊谷での義経でございます。松島屋さんでは、今回が始めてだと思います。
敵の大将を助けるため、かわりに子供を殺せと部下に命じる......。そう考えると義経って非情な冷たさを持っていたのではと思ってしまいますが、それを敵に対する思いやり、暖かさに変えてしまい、その後の悲劇を背負った上で華やかな雰囲気があって、御大将の格と品位を失わずに務めたく思っております。。
先日あるディナーの席で義経の話がでました。駐日チュニジア大使が「義経は立派な武将であり、妻や静御前という恋人までいるのに、お能ではなぜ子供が演じるのですか?」というご質問がございました。それから同席しておりました篠田正浩監督、梅若猶彦さんと義経についての話が始まりました。結局それは兄頼朝に追われ、落ちて行く哀れさを出すためではないかということになりました。そして、歌舞伎「勧進帳(安宅の関)」では大人が演じること、音羽屋系では子方の心を持って演じ、成駒屋系ではあくまでも御大将として演じるという違いがある旨をお話いたしました。その折の篠田監督の義経の時代背景、演劇論、梅若さんの能の演じ方の不思議や疑問点や変化等、興味深いお話を伺うことができました。外国の方である駐日チュニジア大使の鋭いご質問・ご意見から、義経論となり多くの事を学ぶことができ、そして義経は私の一生の役としたいと、改めて思わせていただいた時となりました。

夜の部「鞍馬山誉鷹」は富十郎兄さんの息子さん、大ちゃんの鷹之資襲名披露狂言です。鷹之資さんのための新しい作品ですので稽古の折りによく伺って、お祝いの気持ちで務めさせていただきます。
「大経師昔暦」今回で4回目となります。芝翫兄さんのおさんで2回、京屋の兄さんのおさんで1回務めております。その3回とも、他のお役も先輩方でしたので、ひっぱっていただきながら務めました。今回はおさんの時蔵さん初め同年代の方々との舞台となります。先輩方との舞台の経験を活かしつつ、何より近松の世界が描けるように、出演の方々と相談して新たに作り上げていきたく、稽古に入りました。出来上がりは、ご覧のうえご批評いただきたく思っております。

10月の国立劇場は昼一部の舞台で5時間と長い作品でしたが、変化にとんでいて、あまり長さを感じなかったというご意見を多くいただきました。
江戸の時代から上演されていなかった場面の復活、これは新作と同じことだと思いますが、上演記録等を参考に演出の織田さん、富十郎兄さん方と相談しながら務めさせていただきました。
嵐ちゃん(松緑丈)の宙乗り。いつもより距離は長いし、暗い中での移動......、お客様は喜ばれたようですが、大変だったと思います。地震のあった日がございましたが、宙乗りのあとの幕でのことでしたので、まぁ、良かったです。宙乗りの最中だったら、本人はもちろん、下に居るお客様も怖い思いをなさったのでは……。無事何ごともなく千穐楽を迎えられて安堵いたしております。
私の二役、源三位頼政はどちらかというと裁き役の感じで、渡辺亘は二枚目で務めましたが、如何でございましたでしょうか?ストーリー的には複雑な芝居でございますが、南北の世界を楽しんでいただけたなら幸いでございます。

この芝居の間、19日に第二国立劇場オペラ科・バレエ科研修生に今回で2回目となる特別講義をいたしました。前回「舞台上の礼儀」についてお話してほしいと牧阿佐美先生に頼まれて「性根」についてはお話いたしましたが、稽古嫌いだったこと、親に注意され反発したこと等、あまり良い話はできなかったので、もうお声はかからないと思っていました。ところが研修生が新しくなっているので、前回同様のお話をとご依頼いただきました。今回もまた、若いうちの反発等の話と、性根の話をいたしました。オペラ科の研修生より、舞台中の体調維持についてのご質問をいただきましたが、歌舞伎役者はこの点についてはいい加減です。でも公演中は風邪くらいひいたとしても舞台は務められるものなのです。緊張感は保っているから、などとご返事しましたが......。当たり前のご返事しかできずに申し訳ないことでした。講義後、阿佐美先生、バレエ科主任豊川美恵子先生、研修課課長とお食事し、若い方への指導方法など先生方からこちらが学ばせていただきました。勉強会、子供歌舞伎教室などで、役立たせて頂こうと思っております。

歌舞伎座は1日初日で、25日楽、翌26日には京都です。寒さに向かい、風邪の流行る季節です。皆様もお気をつけて、歌舞伎座、南座へとお出掛けください。
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