ひとりごと 〜 04/01

平成16(2004)年最初の[ひとりごと」本年もよしくお願い申し上げます。
毎年お正月は、一年の計も前年の反省もなく忙しく過ごします。昨年、今年と大阪での初芝居でございましたので、なおさら慌しく感じられ、二年続きで新幹線に乗る元旦となりました…。というわけで、お正月の過ごし方は昨年1月の「ひとりごと」に書きましたのと同じでございます……。

さて、初芝居のことから。
序幕「里見八犬伝」─ 屋根の上で大立回り。元来、高い所に上ったりするのは苦手な方ですし、まして朝から。。。 緊張もいたしましたし、体力も使いました。若手より若い役、若衆の動きになっておりましたでしょうか?
エレベーターを待つ時間など考え、休憩では楽屋に戻らず、舞台脇のこしらえ場で次の化粧・着付けをいたしました。
「土蜘蛛」頼光 ─ こちらは動きのない役、動き回ったあとにじっとしている役。これ、けっこう辛いものです。頼光のようなお役は、興奮した状態では演じられません。神経を落ち着かせ、身体を醒まさないと、気持ちと形を維持することができないのです。どのお役でも同じですが、鏡に向かい化粧を直し、衣裳を着ける、その間に自分からその役に、前の役から次の役に切り替えをする─。毎日のことですが、スムーズにいく日、うまく運ばない日とまだまだでございます。
さて、「土蜘蛛」は播磨屋さんとご一緒の舞台。中日すぎに播磨屋さんが40度近くの熱をだされ、心配いたしましたが、舞台上ではそれを感じさせない芸でございました。私は、気を引き締め、御大将を務めましたが、どこか雅な雰囲気が出せていればと存じます。

今月4役でございましたが、「土蜘蛛」のあと5時間ほど間がございましたので、昼食を取って、一度ホテルに戻り3時間くらい休むことができました。夜の部の前にこの休みがあったことは体力的にも、精神的にも助かりました。

「人間万事金世中」 ─ 思いもかけないお役を演じることとなり、お笑いの本場での喜劇…。どうなるか正直いって不安でした。富十郎兄さんのなさったキャラクターは、とても私ではできません。台本を何度も読み直し、私のイメージを損なわず、勢左衛門の人間性がでるキャラクターを考えました。成り金で、金に目のない男。そのように考え、散切り物ですので、いっそのこと洋装でと衣裳屋さんに連絡しましたところ、そちらでも洋装は如何かと思っていたとのこと。趣味の良い服、というより気障な感じの服を選び、金縁の眼鏡・金時計と気障に徹することといたしました。稽古に入りますと、共演者の皆さんが、それぞれ工夫をした役作りをしてくださっておりました。私の考えを芯として、皆さんの工夫を廣田さんがうまく纏めてくださり、前回とちがった「人間万事金世中」が出来上がった訳です。
こちらがおかしくてもお客様がおかしいと感じてくださるとは限らないのですから、人を笑わせるのは難しいことと実感したひと月でした。喜劇を演じるには、自分自身をハイテンションにもって行かないと演じられず、普段の芝居とちがったエネルギーを使いました。共演者全員の協力で、吉本の笑いとはちがって、散切り物であってもあくまでも歌舞伎の笑いを、大阪のお客様にも受け入れていただけたのではと思います。

こぼれ話を一つ ─ 楽日のことです。
二幕一場の最後花道で、台詞を言って帽子をかぶるときに「チョン」と狂言方が析を打つのですが、鳴りませんでした。私も出演者も「チョン」と言ながら、もう一度台詞からやり直し帽子をかぶり直したのですが…、やはり析は鳴らず。そのときでした、客席のご婦人が「チョン」と大きな声で入れてくださったのです。さすが、道頓堀の劇場のお客様と感じ入った次第でございます。

「俄獅子」─ これがあって、気持ち良く一日を終えることができました。
草履を頭に載せて終えるのでは、ちょっと、私といたしましてはお役の上とはいえ気分良くという訳には参りませんでしたから―。

8時5分に打ち出し。比較的早いのですが、序幕から切までですので、北の新地は中々足が向きませんでした。贔屓にしてくださるお店にもやっと一度ずつ行っただけ…。この場を借りてお詫び申し上げます。
大阪球場跡にできたなんばパークス。若者向きのお店が多いとのことですが、食事処は遅くまでやっていて、イタリア料理の洒落たお店がありました。それとホテル近くに美味しくて、手ごろな和食のお店を見つけ何回か通いました。
東京に戻りましたら「食い倒れの街大阪から帰ってきたのだから」と、野菜尽くめの食卓です。

さて、2月歌舞伎座は昼の部一役でございます。
「市原野のだんまり」─ 珍しい狂言でございます。昔、俳優祭の子供歌舞伎で、段四郎さん、魁春の3人で演じた思い出がございます。そのときは魁春がお姫様役でしたが、今回は玉太郎が稚児役で演じます。ストーリーはあるといえばあるのですが、すすき野に浮かぶ月、風情のある舞台をお楽しみいただければと存じます。
子役のときに演じたとはいえ初役と同じ。藤間宗家、勘祖さんと相談し情緒ある舞台といたしたく思っております。

まだまだ寒い日もございますが、春遠からず、梅の季節でございます。歌舞伎座に咲く"梅の花"(?) ご見物いただければと存じおります。
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