ひとりごと 〜 03/08 (2)

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「毛谷村」─ 始めにこの役を務めました時は、自分の仁ではないお役に思い躊躇いたしました。お園に一目で 惚れされる役。優男ではありませんが、強さの中に男の色気が必要な役です。このお役は幕開きから最後まで出 ずっぱりですので、体力的にはけっこう辛い役です。何故か、地方では何度か務めさせていただきましたが、歌 舞伎座では今回が初めてでございます。諸先輩の作り上げたものを大切にしながらも、自分なりの六助を務めた く思っております。

「河内山」─ このようなお役は相手との息の合わせ方大切ですが、播磨屋とはその点は心配ございません。7月 と違って今回は言い負かされるお役です。しかし、大名の品格と大きさは、最後まで失ってはなりません。松江 候が貧弱になってしまいますと芝居を壊してしまいますので、心して務めなくてはならないお役と思っております。

「俊寛」─ 久しぶりに丹波少将成経を務めます。このお役は中村屋のおじさんの俊寛で始めて務めさせていただ き、手取り足取りおじさんに教わった思い出のある役です。あのようななりをしていても公家の品格と、島娘に 恋をする若々しさが出るように、おじさんに教えていただいたことを思い出して務めます。
魁春の千鳥とは共演していると思っておりましたら、丹左衛門で一緒していて、成経では今回が初めてだそうです。

先代(初代吉右衛門)の舞台は、私は自分の初舞台の前に見た覚えがございますが、子供のことであまり記憶が ございません。しかし父にとりまして大恩人でございますので、五十回忌追善演目に2本とも出させていただく ことは有難いことでございます。
父も今の播磨屋をかわいがって、先代の芸をしっかりと伝えたいと思っていたようで、相手役また一緒の舞台に 出ていなくともよく注意をしておりました。播磨屋も初日の夜にはかならず岡本町に来て、私たちよりも父の注 意を素直に聞いていたように思います。倅といたしましては父の生前にはどこか素直に聞けないところがござい ましたが、父が亡くなった今頃になって、言われたことがつくづく身にしみて感じられ、理解し、舞台に活かせ るようになってまいりました。また、稚魚の会の指導をして改めて思ったことでもありますが、播磨屋たちと力 を併せて先人たちの作り上げたものを引き継ぎ、次代の人たちに伝えていく立場になったと思います。
新しいこと、これも大切ですが、若いうちはまず、基本を身に付けなくてはいけません。そして、基本を踏まえ て、現代に通じ未来には古典となる作品を作り出す、これも私たちの仕事だと改めて感じた夏でした。


気候不順な夏ではございましたが、私にとっては良い夏休みでした。
9月の舞台も始まりました。しばらく舞台が続きますが、体調に気を付けて毎日の舞台を大切に務めてまいりま すので、ご見物の程よろしくお願い申し上げます。
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